エアコン掃除を自分でやろうと思っても、どこから手をつけて、どこで止めればいいのかがわかりにくいと思います。ネットの情報は「奥まで洗う」ものから「フィルターだけ」まで幅があり、判断がつきません。この記事は、家庭用の壁掛けエアコンを前提に、電源プラグを抜くところから順番どおりにたどれる手順書として書いています。あわせて、手を出すと壊す・怪我をする範囲も示します。作業そのものは、慣れれば30分から1時間ほどで終わります。
先に全体像:どこまでやるか
自分で掃除できるのは、工具を使わずに手が届く場所までです。
| 場所 | 自分でやるか | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| フィルター | やる | 10〜15分(乾燥時間は別) |
| 前面パネル | やる | 5分 |
| 吹き出し口・ルーバー | やる | 10〜15分 |
| 本体の外側と周辺の壁 | やる | 5分 |
| 熱交換器(アルミフィン) | やらない | ― |
| 送風ファン | やらない | ― |
熱交換器と送風ファンを外している理由は難易度ではなく構造です。この2か所は本体を分解して電装部を養生しないと水が使えません。境界線の詳しい理由はエアコン掃除はどこまで自分でできるかで説明しています。
なお、フィルターの水洗いは完全に乾くまで数時間かかります。晴れた日の午前中に始めると、その日のうちに戻せます。
用意するもの
特別な道具は要りません。ほとんどが家にあるものです。
- 掃除機(ノズルは細めのものがあると便利)
- 中性洗剤(食器用で十分。フィルターの油汚れ用)
- マイクロファイバークロス 2〜3枚(拭き取り用と、乾拭き用)
- 割り箸(クロスを巻いて、吹き出し口の奥を拭くのに使う)
- ゴム手袋(ホコリと洗剤対策)
- 新聞紙またはビニールシート(エアコンの下に敷く)
- 踏み台(安定するもの。椅子で代用しない)
洗浄スプレーの類は、この手順では使いません。使わない理由は市販のエアコン洗浄スプレーは使っていいのかにまとめています。
手順
① 電源プラグを抜く(最初に必ず)
これを飛ばさないでください。 リモコンで運転を止めただけでは、本体には電気が流れたままです。掃除中にルーバーやファンが動いて指を挟む、濡れた手で内部に触れて感電する、といった事故につながります。ダイキンのエアコン掃除のガイドでも、作業前に必ず運転を停止して電源プラグを抜くかブレーカーを切るよう案内されています(2026年7月時点)。
コンセントが手の届かない位置にあれば、そのエアコンの回路のブレーカーを落とします。抜いたあと、エアコンの下に新聞紙かビニールシートを敷きます。ホコリと水滴が落ちます。
② 前面パネルを開ける
本体の下側、または左右の端に指をかけて、ゆっくり上に持ち上げます。多くの機種は途中で止まって開いた状態を保持します。力任せに開かないでください。初めてなら、取扱説明書の開け方の図を先に確認しておくと安心です。
③ フィルターを外す前に、表側から掃除機をかける
ここを飛ばすかどうかで、後片づけの手間が大きく変わります。
フィルターを外してから叩いたり払ったりすると、溜まったホコリが部屋中に舞います。外す前に、フィルターが本体に付いたままの状態で、表側(部屋に面している側)から掃除機をゆっくり当てて吸い取ります。 ホコリは表側に付いているので、表から吸うのが理にかなっています。
吸い終わってから、ツメを外して手前に引き抜きます。この時点で部屋に落ちるホコリはかなり減っています。
④ フィルターを水洗いして、完全に乾かす
掃除機で取れるのは乾いたホコリまでです。台所の近くの部屋や、数か月放置したフィルターは水洗いをおすすめします。
- 裏側(本体に向いていた側)からシャワーを当てて流します。 表から流すと汚れを網の目に押し込むことになります
- 落ちない汚れは、中性洗剤を薄めた水を含ませた柔らかいブラシで、網目に沿って軽くこすります
- すすいだあと、タオルで水気を挟み取ります
- 陰干しで完全に乾かします。 直射日光は変形の原因になります
生乾きのまま戻さないでください。 濡れたフィルターを本体に付けると、そこが湿気の供給源になり、内部でカビが育つ条件を自分でつくることになります。ダイキンのガイドでも40℃以上のお湯や揮発性の溶剤は使わないよう案内されています。
乾燥待ちの間に、次の手順を進めます。
⑤ 吹き出し口とルーバーを拭く
臭いが気になっているなら、ここは省略しないでください。
ルーバー(風向きを変える羽根)を手でゆっくり開きます。動く方向にだけ、ゆっくりが原則で、無理な方向に力をかけると割れます。クロスを固く絞って、ルーバーの表と裏を拭きます。奥は割り箸にクロスを巻きつけて届かせます。黒い点や黒ずみが取れてくるはずです。
注意点が2つあります。
- 奥まで突っ込まない。 ルーバーの奥にある筒状の部品が送風ファンです。割り箸で触ると羽根が欠けたり、かえって汚れを押し込んだりします
- 水をしたたらせない。 布は「絞ったつもり」ではなく、握って水が落ちない状態まで絞ります
⑥ 前面パネルを拭く
外せるタイプなら外して水洗いしてから拭き上げます。外せない場合は、固く絞ったクロスで表と裏を拭きます。裏側にホコリが溜まっています。 表からは見えないので見落としやすい場所です。
⑦ 本体の外側と、まわりの壁
本体の上面はホコリが積もるので、乾いたクロスで拭き取ります。あわせて周辺の壁も軽く拭いておくと、吸い込むホコリが減ります。
最後に、乾いたフィルターを戻し、前面パネルを閉じ、電源プラグを差します。その後、送風運転または冷房を短時間かけて、異音や異臭がないか確認してください。
やってはいけない4つのこと
手順と同じくらい大事なのが、ここです。
1. 内部に水をかけない
熱交換器や吹き出し口の奥に水を流すのは、業者が電装部を養生したうえでやっている作業です。養生なしで水をかけると、基板やモーターに直接かかります。製品評価技術基盤機構(NITE)は2020年6月25日の注意喚起で、エアコン内部洗浄による事故が2019年度までの5年間に20件発生していること、内部配線の端子部分に洗浄液が付着してトラッキング現象が起き出火した事例があることを公表しています。
2. 熱交換器(アルミフィン)に触れない
フィルターを外すと見える、薄い金属板が細かく並んだ部分です。端が鋭く、指を切ります。 また非常に薄いので、掃除機のノズルやブラシを当てると簡単に曲がります。フィンが潰れると風が通らなくなり、効きがかえって落ちます。日立も室外機のお手入れの案内で、むき出しの熱交換器には危険なので直接触れないよう記載しています(室外機についての案内ですが、フィンの構造と危険性は室内機も同じです)。
3. 送風ファンを手や棒で回さない
ホコリ取り棒などでファンを掃除する方法が紹介されていることがありますが、ダイキンのガイドでは避けるべき行為として挙げられています。羽根の変形や、モーター軸への負荷につながります。
4. 洗剤やスプレーを内部に吹き込まない
すすげないため、洗浄成分と汚れが内部に残ります。詳しくは洗浄スプレーの記事を読んでください。
どのくらいの頻度でやればいいか
- フィルター:資源エネルギー庁の省エネポータルサイトでは「フィルターを月に1回か2回清掃」が推奨されています(2026年7月時点)。清掃による電気代の削減効果の試算はフィルター掃除の頻度とコツで扱っています
- 吹き出し口・パネル・本体外側:シーズンの始めと終わりの年2回で十分です
室外機については掃除より環境を整えるほうが効くので、室外機の掃除は必要かを参照してください。
ここまでやっても改善しないとき
手順どおりに終えて、1〜2週間使ってみてください。そのうえで、
- 運転開始の数分間だけ、酸っぱいような臭いがする
- 吹き出し口の奥をのぞくと黒い点が見える
- 風量が明らかに落ちている
このどれかが残るなら、原因は送風ファンや熱交換器にある可能性が高く、分解洗浄の検討段階です(エアコンがカビ臭い原因と対処)。逆に言えば、ここまで試して解決したなら、業者に頼む必要はありません。
依頼すると決めた場合は、作業範囲と追加料金の条件を先に確認してください(業者の選び方、見積もりで確認すること)。賃貸なら、費用を自分で負担する前に賃貸のエアコンクリーニングは誰が負担するのかを読むことをおすすめします。
まとめ
手順は7つ。そのうち最初の1つ——電源プラグを抜く——は必ず実行してください。あとは「表から吸ってから外す」「完全に乾かしてから戻す」「奥に突っ込まない」の3点を守れば、事故なく終わります。
自分でできる範囲は限られていますが、フィルターと吹き出し口の掃除には意味があります。そして、ここまでやって残った症状は「奥の問題だ」という判断材料になります。